観劇記録であるとか

タイトルの通り。

『薬をもらいにいく薬』いいへんじ

『薬をもらいにいく薬』いいへんじ
会場:こまばアゴラ劇場
上演時間100分、休憩なし

2本立て公演の1本。
2021年夏の芸劇eyes で「序章」が上演され、今回はその全編。

不安障害のある主人公が、出張から帰ってくる恋人を迎えに羽田空港まで行こうとするのだが、薬を切らしてしまって外出できない。偶然家を訪れたバイト先の同僚ワタナベと共に羽田へ向かう道中(家含む)を描く。

いいへんじの「答えを出すことよりも、わたしとあなたの間にある応えを大切に」というコピーが好きなのだが、そのコピーに沿った作劇となっている。
主人公ハヤマとワタナベの間もそうだし、ハヤマ・ワタナベのそれぞれの恋人との間もそうだ。互いを気遣ったり、意図せず傷つけたり、謝ったり、を繰り返しながら対話を続ける。またその会話も(概ね)軽やかで上手い。

ただ、構成と演出があまり好みではなかった。中盤のハヤマ・ワタナベの恋人(別人だが同じ役者が演じる)が多方に気を配ってしんどそうにしているところであるとか、ワタナベとその恋人の長電話であるとか、いくつかの場面をいささか長く感じた。そこがじっくり長尺で描きたい重要な場面なのは分かるのだが、それまでのテンポから急に切り替わるし前触れがないように思えた。とくに長電話のシーンはハヤマをずっと放置してしまうので会話に集中しきれない。
また、セットを動かすような長い場面転換がただ長い場面転換でしかなく、あまり工夫を感じられる演出ではなかった。
気になった場面は後半に集中しており、序盤、おそらく芸劇で上演されたであろうパートはテンポが良い。芸劇での上演に付け足しをしたような印象で、100分での上演に合わせて全体の調整を出来なかったようにみえたのは勿体なく思えた。

また他の方も指摘していたが、上演前の描写の注意は過剰に思えた。劇作家本人も言っていたが、劇場内は狭く、上演中に退場するのは物理的にも心理的にも難しい。退場をサポートするスタッフがここにいます、と案内するのはとても良い。ただ、途中退場のハードルが高い中での丁寧すぎる事前の注意は、これだけ前もって言ったから大丈夫だよね、というような圧にもなりうる。あくまで事務的に案内してほしかった。(※上演期間前半でのこと、変わっているかもしれない)