観劇記録であるとか

タイトルの通り。

観劇まとめ(2023年)

年が明けて、もう1月も下旬で今更ではありますが、2023年の観劇は以下の通りでした。


劇場
2月
桜姫東文章』@あうるすぽっと
笑の大学』@PARCO劇場
3月
『掃除機』@KAAT 中スタジオ
4月
『ブレイキング・ザ・コード』@シアタートラム
ラビット・ホール』@PARCO劇場
ハートランド』@東京芸術劇場 シアターイース
クレイジー・フォー・ユー』@KAAT ホール
5月
『XXLレオタードとアナスイの手鏡』@静岡芸術劇場
天守物語』@駿府城公園内特設劇場
『怪獣回しし』@ストレンジシード静岡
『χορός/コロス』@ストレンジシード静岡
『わたしが土に還るまで』@ストレンジシード静岡
『ギガ鳥獣ギガ』@ストレンジシード静岡
『equal/break-fast』@ストレンジシード静岡
『BGM』@KAAT 大スタジオ
『REVISOR』@神奈川県民ホール
6月
『ある馬の物語』@世田谷パブリックシアター
7月
『犬と独裁者』@駅前劇場
『兎、波を走る』@東京芸術劇場 プレイハウス
8月
『さいごの1つ前』@逗子文化プラザ なぎさホール
桜の園』@PARCO劇場
ムーラン・ルージュ』@帝国劇場
9月
アメリカの時計』@KAAT 大スタジオ
『切り裂かないけど攫いはするジャック』@本多劇場
10月
『金夢島』@東京芸術劇場 プレイハウス
11月
『極付印度伝 マハーバーラタ』@歌舞伎座
ねじまき鳥クロニクル』×3回 @東京芸術劇場 プレイハウス
『無駄な抵抗』@世田谷パブリックシアター
12月
『外地の三人姉妹』@KAAT 大スタジオ
『十二月大歌舞伎 第二部』@歌舞伎座
ジャズ大名』@KAAT ホール

映像・配信
6月
『チャンピオン』(METライブ)
9月
『骨と十字架』(新国デジタルシアター)


というわけで、2023年は31作品33回、映像含めると33作品35回観たようです。
ストレンジシードで稼いでいる部分が大きいですが、過去最多です。そして、見過ぎたな、と思いました。観劇趣味者の中ではかなり少ないはずなのですが。12月くらいに、数観てもとくに得るものはないなと思ったのと、1年の貯金額が少なかったのにがっかりしたので、2024年は減らすような気がします。とはいえ3月までは月2ペースで観そうだ。

良かったもの。
まず『ねじまき鳥クロニクル』の再演は、ずっと待ち望んでいたものだったのでとても嬉しかった。途中、成河の残念な発言があったので心穏やかではなかったけれど、それでも幸福な再演だったと思う。あの作品での渡辺大知はもっと評価されるべき。
最も良い作品だと思ったのは『桜姫東文章』。演出もクールだし、音楽もいいし、フェミニズムの観点もあってよかった。清玄の幽霊が早替えでなかったのはちと残念だったが。
心動かされたのは『さいごの1つ前』。あの愛に満ちた空間がとても良かった。あと『わたしが土に還るまで』も良かった。自然の中で、生きて死ぬことの奇跡を見せつけられた。
是非再演して欲しいのは、『極付印度伝 マハーバーラタ』と『ジャズ大名』。どちらも分かりやすい楽しさの中に、悲しみが横たわっている作品だ。音楽も良い。再演して、より多くの人のもとに届いて欲しい。
その他、『掃除機』における環ROY、『金夢島』の字幕が良かった。『XXLレオタードとアナスイの手鏡』における常時のバリアフリー上演も。(字幕が見づらいとの指摘があったようだが)

振り返って改めて、やはり自分は生演奏付きの作品が好きだなと。何ですかね、演奏家がいることで、これは娯楽作品ですよ興行ですよというのが意識されるのがいいのかな。独りよがりでなくなるというか。
歌舞伎がわりと手頃なのに気付いた年でもあった。興味あるのあればまた行くかもしれない。生演奏だし。
昨年はNTLに行けなかったのが残念。色々と観たいのはあったのだが、スケジュールが上手くあわず。お願いだから神奈川の上演劇場を川崎に戻して欲しい。一方METライブが上演館充実なのには驚いた。
あと嬉しかったのは、堀尾幸男さんの展示でPARCO劇場の舞台上に上がれたこと。知らずに行ったので激アツだった。舞台上から観るとより一層親密な劇空間だなと感じた。

2024年はどうなるやら。SNSにリンク付けてない今、誰がどうやったらこのブログに辿り着くのか分かりませんが、ちまちまとのんびり更新するつもりです。

 

個別で記事あげなかったものについて以下簡単に記述。

笑の大学』@PARCO劇場
なぜか2幕ものと勘違いしており、気持ちの行場に困った。のと『桜姫東文章』を観た後で劇構造がなんだとかそういう頭になっていたのが良くなかった。
そんな中でも、検察官(演:内野聖陽)が、自分の行った仕事の行き着く先を知ったときの間抜けな表情が印象に残った。

『ブレイキング・ザ・コード』@シアタートラム
役者は皆、演技が大仰で声が大きすぎると思った。スタイリッシュな演出は好みだったが、それでなぜあんなに声を大きく出させたのか。
死をロマンチックに扱う。それは理不尽に扱われる現実からの逃避として生まれるものか。最後の暗転の中、ギュッと胸を締め付けられた。

ラビット・ホール』@PARCO劇場
そうだね、と思って終わってしまった。
この作品の感想とは外れるのだが、そもそも大劇場でやるあぁいう具象が好みでない。だったら映画でも観に行きたい。成河期待で行ったが、そういった感覚は特に変わらず。リアリズム、ということでいえば、あんな大きな空間で役者たちが目の前にいるはずの観客たちをいないものとして「現実的に」演技すること自体が不自然ではないか。

ハートランド』@東京芸術劇場 シアターイース
合わず。ただ冒頭の映画館の演出は面白くみた。
実の家族の話を何度も題材にしてきて、その暴力性は承知しつつやっているんだろうと思っていたが、そうじゃなくて本当に今気付いてこの作品を作った、というのには驚く。悪い意味で。

天守物語』@駿府城公園内特設劇場
客席もふんだんに使って楽しい芝居。
朱の盤坊がセクハラをするシーン(そして真剣には咎められない)が気になった。人じゃないから描写として良しとすべきものか。

『BGM』@KAAT 大スタジオ
びっくりするほど合わなかった。なんだろうこの合わなさ。あのあたたかな空気に全く馴染めなかったし面白さを見出だせなかった。

『REVISOR』@神奈川県民ホール
ダンス公演だが、ナレーションが非常に重要。しかし、大きな会場のためパフォーマンスを見ようとすると字幕が見えない。英語力不足に悔しさを覚える。
とはいえ、非英語圏でやるならもう少し小さいハコでやるか字幕見やすくするかして欲しい気持ちがすごい。

『犬と独裁者』@駅前劇場
当日券を購入したら最前センターを案内されビビる。久々の小劇場。劇団印象は以前から気になっていたのだ。
結局人は人を殺すのが嫌なのだと思い至った。だから、直接手を下さないようシステム化するとか、その対象を人とみなさないようにするとか、殺害にロマンを与えるとか色々しているのだろう。

『兎、波を走る』@東京芸術劇場 プレイハウス
近年の野田地図の中ではわりと好きだった。ただ歴史的な事象を混ぜ込むのではなくて、そういう作劇をする劇作家として、作家とは?物語とは?という問いに『フェイクスピア』よりは深いとこで向き合っているように思えた。
あるいは単に(野田地図では久々の)1階席だったから楽しめたというのもあるかもしれない。松たか子がたいへんキュート。

桜の園』@PARCO劇場
ペアチケを利用して母と連席で取った結果、集中出来ず。演劇は一人で沢山の人と観るに限る。落ち合うのは、後。
この場所がなくなってしまうかもしれないという重大な問題について認識はしつつもやりすごしてしまう。その愚かさ。皮肉。とか?

ムーラン・ルージュ』@帝国劇場
楽しかったね。終。
少しアルコール入れて、ショー見物と思って観た。途中周り泣いてて、えぇ…と思う。それ含めて観劇の面白さですね。
帝劇2階最後列センターはわりに親密、と思ったが、そのあと歌舞伎座が3・4階席が更新していくのだった。

アメリカの時計』@KAAT 大スタジオ
終わってすぐ金購入について調べてしまったくらいには差し迫った問題だったが、特に残らず。戯曲があまり好みでないのかもしれない。

『切り裂かないけど攫いはするジャック』@本多劇場
楽しくはあった。ジャックが堂々とさらっていくとこの反応とかとても面白かった、が。
エチュードで積み重ねて作っている感がすごくて、個人的に懐かしくも、エンタメ作品としての完成度としては物足りなかった。最後大きな装置ぶっこんで無理やり終わらせる感じとか、分かる、と思いつつ。

ねじまき鳥クロニクル』@東京芸術劇場 プレイハウス
思いがありすぎてまだ記事に出来ない。この4年近く、この作品と共に生きてきたと言ってよい。最後の観劇時にすとんと落ちるとこがあって、その上でまだ深堀れると思った。まだしばらく共にありそうです。

『無駄な抵抗』@世田谷パブリックシアター
池谷のぶえがとても良かった。彼女の悲痛な宣言に胸が苦しくなった。
ただ「無駄な抵抗」や「運命」という言葉から想像していた物語とは異なっており、またそれが良くなかった。性暴力への眼差しそれ自体は良いのだが、性暴力は運命によるものでなく、特定の人間の加害によるものだ。作中で起きる悲劇は概ね一人の人間に起因しており、運命という大きな言葉に対してはミニマムだし、その罪を大きな話に転じさせるのは逆に罪と向き合えていないように思えた。
あと、いくら人があまり乗っていないとはいえ、電車を故意に脱線させるのは個人的に好みでない。

『外地の三人姉妹』@KAAT 大スタジオ
チェーホフ『三人姉妹』の翻案。チェーホフの方は読んでいない。
概ね良かったが、話全体はそうだねと思ってみてしまった。男中心で、女も分かってそれに乗っているかんじがよく現れていた。また日本が韓国にしたことは勉強しなくてはいけないなと改めて。
次女の夫、倉山のそら恐ろしさ。こういう人間を描けるのがチェーホフ(短篇集は読んだんです)の強みであり、それに説得力をもたせる翻案・演出・演技であった。

『十二月大歌舞伎 第二部』@歌舞伎座
舞踊劇の『爪王』と忠臣蔵モノで新作の『俵星玄蕃』を観た。当初は第三部の『天守物語』を観たいと思っていたのだが、舞台映像を観たら2部の方が面白そうだったのでそちらを。席は3等A席。(前日でも余っていた)
『爪王』は舞踊というか、美しいアクションが魅力。ふぶき(鷹)が可愛い。勘九郎の身体能力も素晴らしく。回転しながら出てくるのもさりげないが美しい。
俵星玄蕃』は三波春夫が歌ってる動画を見てから行った。つまらなくはないが、最後の立ち回りはちょっと退屈する。役者は市川青虎が良かった。

あとパフォーマンス枠として。国立新美術館でやっていた『大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ』展での鈴木竜のダンスパフォーマンス。これがとても良かった。暗く広い部屋で1枚の大きな布が風に揺られている。海のよう、生き物のよう、異界への入口あるいは境目のよう。そこに人間が立ってソレと向き合う様はより一層その印象を強くさせていた。