観劇記録であるとか

タイトルの通り。

ストレンジシード静岡2023

5月4日(木・祝)にストレンジシード静岡の演目をいくつか観た。

10:30~ お寿司『怪獣回しし』@芝生
猿回しの怪獣版。
開場中、怪獣回し師は怪獣ショーで使われるような音楽(うなり声とか入るが陽気なやつ)を流しながら、呼び込みをしている。楽しげな雰囲気で怪獣回しが始まるが、怪獣は芸を上手く出来ず、また回し師もそれを責めるため最悪な空気になる。最後は何故か全身タイツのペガサスと馬が登場し、馬が公園内を走り回って終劇。
怪獣回し部分は、演出家と俳優の間に起こりがちなハラスメントについてポップに批判をした。ただホントに空気が最悪なので観ていてヒヤヒヤした。前提を共有していない観客(どんな団体か分からない、途中から観始める人もいる)の多いストリートシアターでやることかは微妙。遠巻きに見る分には何か面白い格好の人たちが変なことやってる! で終わるのだろうが。あと灰皿は擦られすぎだと思う。
無茶苦茶なラストシーン、俳優が「演劇、楽しいよ! 一度やってみるといいよ!」と呼びかけていたのが良かった。演劇フェスの始まりに適した作品だった。

11:00~ 『χορός/コロス』@フェスティバルgarden
70名近い出演者による人類史。
一部のシーンでメインキャストを担う者はいるが、基本的には群衆の様子を描いている。
集団での表現の仕方は上手いし、枕の中の羽毛が舞うシーン等ハッとするほど美しい箇所もあるし、皆が空を見上げるシーンで鳥が飛ぶなど野外公演ならではの奇跡みたいなシーンはあるしで、パフォーマンスとしては良かった。しかし描いている内容はかなり表層的なもので、またデフォルメが過剰な印象をうけた。さすがに倒れた人を写真に取る野次馬はあんなにはいないだろう。

12:00~  安住の地『わたしが土に還るまで』@芝生 (ダンサー:森脇康貴の回)
踊りで表現する九相図。人が死んで、土に還るまで。
芝生にて、観客は演者を取り囲むようにして座る。演者の案内で立ち上がって軽くストレッチ。アクティングエリアが解説された後、雑談のように思い出が語られ、それが九相図への導入になっていく。演者の他にもう一人いてその人が語りを担い、演者は踊りを始める。
非常に良かった。新緑に囲まれ、光はきれいで、土の匂いをかぎながら、死にゆく時、強烈に生があらわれ、そして死は生の、自然の営みの中の1つなのだと感じさせられた。
また野外ならではの奇跡的な瞬間がいくつかあった。雨が降ると言ったシーンだったか、風が吹いて木から殻だろうか小さい部分がいくつも落ちてきて背中にあたり、またそれが光に照らされて輝いて演者に降り注いで。ものすごく美しい瞬間だった。


13:00~  ダンスカンパニーデペイズマン『ギガ超獣ギガ』@大階段
兎・狐・蛙の3匹etc. による生命讃歌。いや、踊りか。
動きは楽しく衣装も可愛く、小道具も面白い。見ていてずっとワクワクしていた。表情も巧みだ。やたら環境団体をネタにするのは気になったが。
音に拘りがあるらしく、市役所前の車も人も結構行き交う場所にしては音が大きめ。他と違って偶然による奇跡は起きにくい会場だが、音の存在感によって「ストリートシアター」フェスの「ストレンジシード」としての機能を果たしていた。


14:20~  マームとジプシー『equal/break-fast』@芝生
ある朝、ある瞬間。別々の場所にいる5人が同じ場所にいた時のことを思い出したりしながら、それぞれに同じ時を刻む。
初めてのマームとジプシーだったのと、来年公演予定の作品のクリエイション/導入部として観てしまったので、ふーん、こんな感じなんだ、みたいなちょっと熱のない目でみてしまった。もしかしたら苦手なのかもしれない。あるいは周りの観客や遊歩道が明るく見えるのが、この演出にあわないと思ってしまったのかもしれない。
ただやはり、野外ならではの奇跡、というのはあって、別々の場所にいて同じ時を共に生きていることが強く意識される終盤のシーンで、さーっと風が吹き抜けていったのは美しかった。あれは観れて良かった。


途中までだが、エンニュイとDANCE PJ REVO の作品も観た。会場はどちらも遊具などのある児童公園だ。
エンニュイは本当に冒頭のみ。演者は児童公園にかなり溶け込んでいたが、一方にずらっと並べられたパイプ椅子および観覧スペースがそれを台無しにしてしまっていた。
DANCE PJ REVO は公園に現れる違和として、静かに始まった。演者は黒ずくめで喋らずテキパキと動く。次第に段ボールが高く積み上がり、そしてそれが崩れる時の動きの意味を観客に問わせる。ただ、ケタケタ笑う子供たちがいることで、意図を読もうとするばかりじゃなく、動きの単純な面白さにも気づく。意外に演者も子供たちに絡むので(遠くにいった段ボールを投げてもらったり)、カタいんだかユルいんだかよく分からない不思議な空間になっていた。


以上。
宿を修善寺に取っていたので(せっかくのGW、観光旅行もしたかった)、夕方のは観れずに終わった。ただそれでもかなり楽しめた。
「ストレンジ」には、普段の街に奇妙な存在が現れるというのもあるが、観劇を目的として来た人にとっては、劇場では入り込むことのない、通行人・車・自然の動き等が見慣れない(ストレンジ)ものとして存在する、というのもあった。
静岡があまり遠くないのも分かったし、是非また行きたい。旅程を詰め込みバタバタしたので、次回はもうちょっとゆっくりと。お茶味わって飲むとか。